その仮面、剥がさせていただきます!
リクの唇があと数センチで触れようとしていた時、あたしはリクの胸を押して突き飛ばした。

「そんなの嫌……」

イヤだイヤだ……嫌……

リクにキスをされるのが嫌なわけじゃない。

嫌なのは、リクの気持ちがあたしにないから。

リクはきっとこう思ってる。

デートで遊園地って言ったら観覧車。観覧車って言ったら、頂上でキス……

あたしじゃなくても、付き合った他の子でもきっと同じ。

上原律子っていうあたしが好きでそうするんじゃない。

リクは付き合っているから、そうすることが当然なんだって思ってる。

「やっぱり、頂上じゃないからイヤだよね」

ほら……ね。

あたしがどう思っていようとこの人には関係ないんだ。



―――陸人は誰にも好きとは言わない。そっちがいくら好きでも、陸人に気持ちは無いってことだ。

―――お前が辛くなるだけだ。


春樹の言葉の意味が分かった気がした。



< 73 / 256 >

この作品をシェア

pagetop