その仮面、剥がさせていただきます!
「そういえば、夕飯作ってたところだったんだよね。良かったら食べてく?」

キッチンに視線を移すと、まな板の上に切りかけの人参と包丁が置いてあった。

ジャガイモと玉ねぎも用意してある。

「リクはお料理出来るんだ」

凄いね!と感激していると「簡単なものしか作らないけどね」と謙遜して言う。

「何作ってるの?」

「シチューだよ。あ。でも、ホワイトソースから作ったりしないよ」

そう言うとリクはシチューの素が入った箱を持ってあたしに見せた。

「それでも凄い……」

「リツだって一人暮らしだから作るでしょ?」

「う……」

それを言われると辛い。

「二人で食べた方が美味しいから食べてってよ」

「うん……それじゃ、お言葉に甘えて」

お友達になったあたしとリクなのに、またまた甘えてしまうあたし。

それでも、色気より食い気の方が勝ってしまったんだもん。しょーがないじゃない?


キッチンに立っているリクの隣で、あたしも何か手伝うよと腕まくりをして手を洗う。

「それじゃ、人参切ってくれる?」

「う、うん。分かった」

リクに渡された包丁を両手に握り、ごくりと唾を飲み込むと、人参めがけて振り下ろす。

包丁に弾かれ二等分した人参が別々にすっ飛んでいった……

「リツ……料理苦手なんだね」

「ははっ」

笑って誤魔化すしかない。

「じゃ……玉ねぎの皮を剥いてくれる?」

リクはあたしから包丁を受け取ると、代わりに玉ねぎをあたしの手の中に置いた。

そしてまな板の上でクルクルと人参を回転させたと思ったら、あっという間に均等に切っていた。

この人参。自分が切られたことが分かっていないんじゃない?

玉ねぎの皮を引きちぎるように取り外しながら、リクがジャガイモの皮を剥く包丁さばきに見惚れていた。

あたしが出来ないことが出来るんだよな……

それで、あたしが得意なことは苦手。

まあね。あたしが得意なことの方が少ないんだけど。




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