その仮面、剥がさせていただきます!
恋する乙女は食欲がないというのは当てはまらないみたいで、動けなくなるまでリクの料理を堪能したあたしは少しでもお手伝いをと食器を洗っていた。

ガシャン―――

手から滑り落ちたお皿がシンクの中でバラバラになる……

何をやってもダメダメだな。

「怪我なかった?」

音に驚いて傍に来たリクに何ともないと泡だらけの手を見せた。

「それより二枚もお皿が割れちゃった……」

お皿の上にお皿が落ちたために、一度で二枚割れるというミラクルまで起こっていたのだ。

「こっち俺が片付けておくから、リツ先にお風呂に入っておいでよ」

「うん……ごめんね」

ってちょっと待った!

「え?あのさ。お風呂って……」

「リツは今日ここにお泊りね。だから、お風呂に入っておいで」

は~い。って……

行けるかってんだ!

「お泊りって……隣に帰るだけだからいいよ」

いったいリクは何を考えてんだか。

いくら友達になったからって、女子が男子の部屋に泊まるってそりゃ~ないでしょ?

「リツは分かってないよね」

いやいや。

分かってないのはリクの方。

あたしに代わって食器を片付け始めたリクは背中を向けたまま言った。

「今日はイトコのお兄さんがリツの部屋に泊まるんでしょ?」

「だから?」

「イトコ同士って結婚できるの知ってる?」

リクの唐突な言葉にブッと吹き出してしまった。

「あははっ。あたしと拓にぃはそんなんじゃないよ。ってか、天と地がひっくり返っても絶対にそんなことにはならないから」

「でも。男と女でしょ?何かがあってからじゃ遅いよね」

「あのね……」

「着替えはお風呂場に置いてあるからね」





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