その仮面、剥がさせていただきます!
リクに押し切られ、あたしは今リクんちの湯船に浸かってる……

って……

こんなのよくないと思うのよ?

いくら友達だからって、リクとあたしだって男と女(一応ね)

だから、何が起こっても不思議がないのは拓にぃとじゃなくてこっちの方だとあたしは思うんだけど……

それについ今し方、あたしはリクに好きだって宣言したはずなのに。

そこんとこリクは分かっているのかな?


色んなことが脳裏に浮かんで、温まり過ぎた状態でリビングに帰ると、リクがソファに座っている後姿が見えた。

リクが観ているテレビではお笑い芸人がコントをしている場面が映ってて、時折テレビの中から笑い声が聞こえてくる。

「お風呂お先に……」

後ろから声を掛けながら前に回り込むと、リクはテレビのリモコンを握ったまま目を閉じていた。

色白で女の子みたいな顔立ち。唇だってほんのりピンクだし、閉じてる瞼には長いまつ毛が規則正しく伸びている。

それにしても綺麗な顔だな……

滑々そうな肌を見ると、思わず触りたい衝動に駆られる。

うう……

指でツンツンしたいっ。

こんな無防備な姿をあたしに晒したら、襲っちゃうかもよ?

リクの顔をまじまじと観察していると、リクの唇が少しだけ動いた。

やっぱ、分かってないよね。

こんなにドキドキしてるあたしのことなんか、リクはこれっぽちも分からないよね。



眠ってるリクの隣に座ると、肩を揺らしながらリクを起こす。

「こんなとこで寝てると風邪ひくよ」

「……あ。うん」

眠そうに目を擦る仕草なんか萌え~なんですけど……

早くお風呂に行ってほしい。じゃないと、このまま押し倒すぞ。コラ。

あたしのちょい変態思考を察知したのか、リクはソファから立ち上がるとフラフラとお風呂場に向かって歩いている。

眠かったのに起こして悪かったかな。

そう思ったけど、リクを襲って犯罪者になるのは勘弁。

あたしはホッとして、テレビのお笑い番組に目をやった。

「あ……リツ」

廊下に出る手前でリクが振り返る。

「なに?」


「そのヘアスタイル似合ってる」




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