その仮面、剥がさせていただきます!
「ううん。泣いてないよ。眠れないだけだから」

膝を抱えた腕の上に頬を付けて横向きにリクを見た。

リクは安心したようにフッと息を吐きあたしの隣に座る。

「リツは枕が変わったら眠れない人?」

「そうかも。枕より抱き枕派だけどね」

昔からそう。何かに抱きつかないと眠れない。

その癖は拓にぃにかなりバカにされるけど。

「そっか……それじゃ俺に抱きついて寝る?」

「それ。笑えない冗談だね」

あたしがどんな思いで友達になろうって言ったのか、リクには分からないのかな?

そんなこと冗談でも言わないでほしい……

「冗談じゃないけど」

「あのね。あたしとリクは今日から友達なんだよ。友達同士ってそんなことしないの!」

「そうなんだ。なら、友達は明日からってことでもいいけど?」

「…………」

全然分かっちゃいないよね……

ダメだこりゃ~


また膝に顔を埋めるとリクの動く気配がする。

部屋の中は薄暗くて、開け放たれたドアからの明かりしかなく、そして異様なほど静かだった。

リクは春樹のことどう思ってるんだろ?

それも知りたいけど、やっぱ一番知りたいのはあたしのことをどう思っているのかってこと……

それを知ればお隣さんとか友達とかそんな関係も危うくなるのかな?

「リツ?」

すぐ傍でリクの声がするのに、リクはそこにいるのにすごく遠く感じる……

「あたしのことリクはどう思ってるのか全然分かんないよ……」

好きとか嫌いとかそんな言葉じゃなくてもいいから聞きたい。

「それって言葉で言わなきゃだめ……なのかな」

「言葉で言わないと分かんないよ」

リクのあの言動でどうやって知れっていうのよ……

「そうかな。そんなに言葉って大事かな……」

それって、どういう意味?

顔を上げて前を見ているリクを見るけれど、薄暗くてどんな顔をして言っているのか分からなかった。

「あたしがリクのこと好きだって言った時、リクはどう思った?」

聞いた後、ドキドキしてリクの答えを待つ。


「……嬉しかったよ」


嬉しかったよ……か。

その答えだけで満足してしまう。

そんなのあたしじゃなくても誰が言ってもリクは同じ答えを言うのにね。


「それが言葉で伝えるってことだよ」

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