その仮面、剥がさせていただきます!
「そうかもしれない……けど、俺はリツと一緒に居たいから居るし、リツのこと抱きしめたいって思うから抱きしめるし……リツのこと」

そう言ったリクと目が合う。


リツのこと?

その後の言葉はなんて続くの?


距離が縮まりリクの腕があたしの肩にあたる。

薄暗い部屋でもリクの顔がよく見える至近距離にドキリとするけど、徐々に近づいてくるリクの顔があまりにも色情的で動けないでいた。

伏せ目がちなリクの瞼が見開いたあたしの瞳と数センチの距離になった時……

リクとあたしの唇が重なった……

あ、あたし……リクとキスしてる?

そう思うと頭の中が真っ白になる。

リクの唇は離れることなくあたしの唇を味わうように動く。

「ん……」

隙間からあたしの息が漏れるとその動きが激しくなった。

これ以上触れているとおかしくなりそうで、押しのけようとリクの肩に手を伸ばすが、その手を壁に押し付けられる。

こんなの春樹との『挨拶程度のキス』とは比べものにならないよ……

角度を変えながら何度も優しく触れるリクのキスに身体の力が抜け、凭れていた壁から背中がずれ落ちベッドの上に横向きに倒れるとやっとリクの唇が離れた。

「リク……」

一緒に倒れたリクが覆いかぶさるようにあたしの上にいて髪が頬にあたってくすぐったい。

リクの息が首にかかるとゾクッと身震いした……

そしてあたしの耳元でリクが囁く。

「春樹とのことは忘れろ」

忘れろ?

低い声と耳に掛かる息。リクには珍しい命令口調に身体の芯が熱くなる。

そして、リクがあたしの顔を見下ろすと再び唇が落ちてきた。

唇の感触を確かめるように優しく振れた後、あたしの口の中に割って入ってきた舌で中をかき回される。

「ん……あ……」

自分じゃないみたいな声が漏れ、発熱したように体中が熱くなってくる。


リク……


静かな部屋にリクとあたしの合わさる音だけが大きく聞こえると恥ずかしさでギュッと目を瞑った。

心臓の音がそれをかき消すように大きくバクバクと鳴っている。


長く唇を塞がれて空気を求めてあたしの口が開くとやっと解放された。

息が上がり固く瞑っていた目を開くとあたしを見つめているリク。


「そんな顔しないで……」


そう言うとリクはあたしの目元にキスをし、その口が首筋に降りてくる。

「ゃ……」

唐突なリクの行動に朦朧とする意識の中で考える。


そうよ。

これは夢……

そうじゃないとリクがあたしにこんなキスするわけないじゃない!

リクにキスしてほしいってあたしの願望が夢の中で実現されてるだけなんだよ。

そうと分かればこんなチャンスは二度とない。

これはあたしの夢なんだから……


リクの手が服の下から直接肌に触れた時、あたしはリクの首に腕を回して抱きついた。

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