揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
「も…もしもし……?」


何とかボタンを押し、私はおそるおそる電話に出た。

だけど、大翔君からの返事は無い。


え?何で?


さっきの高崎君の時のように、電話が切れてるんじゃないかと不安になってきた。

だけど、しばらくしたら。


『……ごめんなさい』


と、いきなり電話越しに謝られてしまった。


「えっ?何で?」


だって、彼に謝られる事なんてないし。

それどころか、謝るならデートの邪魔をした私の方だよ。


『……間違えて、かけちゃったから』


「あっ、そうなんだ……」


『かけちゃった』って言った大翔君は、ちょっとかわいくて。

大人っぽいイメージでも、やっぱりまだ小学生なんだね。


でも…間違いだろうと、私は嬉しいよ?


「これで…おあいこだね」


私も、はずみで押してしまったボタン。

今日は、大翔君が私に掛けてくれた。


それが他の人に掛けるはずだったんだとしても、私は嬉しいんだから。


『はは、ホントだ』


大翔君の声が、笑っているのが分かって。

それだけで、私は幸せな気分になれる。


「そういえば…今日はごめんね。せっかくのデートの邪魔しちゃって」


映画館での諒斗の事を思い出して、とりあえずそう謝った。

あの後、謝れなかったから。


『……別に、いいですよ』


そう言ってくれたけど、機嫌が悪そうなのは気のせいかな?

やっぱり、邪魔した事を怒ってるのかも……。
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