揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
『そういえば…今日はごめんね。せっかくのデート邪魔しちゃって』


幸せだった気分を壊す、その言葉。

由佳さんにそう言われる事で、2人の間に距離を感じてしまう。


俺の事は恋愛対象外なんだ、って言われてるようで。

俺は梨香と仲良くしてろ、って。


「……別に、いいですよ」


つい、口調が冷たくなった。

拗ねている自分に気がつき、やっぱりガキなんだって反省させられる。


話を変えようと、俺は勇気を出して訊いてみた。


「由佳さんも…デートだったんですか?」


否定…して欲しかった。


≪違うよ、2人は友達だよっ≫


覗きを否定した時みたいに、ムキになって弁解して欲しかったんだ。


だけど……。


『うん……』


返ってきた言葉は、それだけだった。

否定じゃなくて、肯定の相槌。


「……そっか。由佳さんの左に座ってた人ですよね?彼氏って」


『あ、うん』


やっぱり。

アイツが、彼氏だったんだ。


勝てる訳ないじゃん。

身長も、ルックスも。


それに、俺は5つも下の…まだ小学生だし。


「カッコイイ彼氏さんですね。お似合い…でしたよ」


無理して、そう言ってみた。

ホントは、認めたくなんかないのに。


諦めなきゃいけないのかな?

彼氏のいる人を、このまま好きでいちゃいけないのかな?


『ごめん…もう、切るね』


ふいに、聞こえてきた言葉。

悲しそうな、由佳さんの声。


「あっ、すいません長々と。じゃあ……」


『うん、じゃあ……』


そして、すぐに電話は切れてしまった。
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