揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
心待ちにしていた放課後。


帰る準備をしていたら、いつのまにか梨香が隣に立っていた。

梨香も、克也と一緒で隣のクラスだ。


「大翔、今日遊びに来ない?」


「ごめん、今日は克也ん家行く約束してるから」


梨香の顔を見ずに、そう答える。

ランドセルに用具を全部詰めると、制帽を被ってから片側に背負った。


「吉野君とこ?じゃあ、私もついて行こっかな」


「えっ!?」


予想外の言葉に、思わず動揺してしまった。


「何よ?私が行くとまずい事でもあるの?」


勘の鋭い梨香の事だ。

俺が由佳さんを好きな事にも、きっと気付いてしまうに違いない。


「今日は、男同士の話があるから」


「何よそれ!?2人で、何かいかがわしい物とか見るわけ?」


勝手に勘違いをして、梨香がそう怒ってくる。


「そんなんじゃないよ。ただ、話するだけだから」


「じゃあ、何の話よ?」


「……内緒だよ」


言えるわけがなかった。

由佳さんの話だなんて。


「……そう言って、浮気するんじゃないの?」


やましい事のある胸が、激しく脈を打ち出す。

浮気をするわけじゃないけど、それに近いものはあるわけで。


「浮気なんてしないから、絶対来るなよ」


そう念を押し、俺は教室を出た。


はぁ……。

梨香の奴、絶対何か勘づいてるよな。


大きく響く鼓動を感じながら、俺は靴箱へと向かった。
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