揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
「急に、ごめんね?」


「あ、大丈夫だよ。どうせ暇だし」


首だけを彼の方に向け、そう答える。


「ちょっと、確認したい事があって」


「確認……?」


「諒斗に聞いたんだけど、好きな人…いるんだって?」


「え!?」


な、何で高崎君に言っちゃうのっ!?

何考えてんのよっ、諒斗っ!


「その人には彼女がいるから、諦めるんだって。そう…なの?」


「それは……」


どうするべきか、迷っていた。

本当の事を言ってしまっていいものか、どうか。


「あのさ、誤解しないで?それを責めてるとかじゃなくて、一応心構えの問題だから」


困っている私に、彼は優しくそう言ってくれて。


こんな私、責められても仕方ないのに……。


しばらく迷ったけれど、私は正直に話す事にした。


「ごめんなさい。諒斗の…言う通りなの」


申し訳なさから、私は深々と頭を下げ。

顔を合わせづらくて、そのまま言葉を続けていく。


「私、好きな人がいるの。だけどその人は彼女がいるし、私の事なんて何とも思ってないと思う。それどころか、迷惑…なのかもしれない」


改めて大翔君にとっての自分を考えてみると、何だか悲しくなってきた。


想ってたって、傷つくだけだよね。


ちゃんと諦めるために、私は高崎君に伝える事にしたんだ。

これで嫌われたとしても、それはそれでしょうがない。


「そっか……」


しばらく黙っていた高崎君は。

私の頭に…そっと、手を乗せてきた。


驚いて顔を上げると、


「俺は、それでもいいよ?その人を忘れる為だとしても、吉野さんは俺を選んでくれたんだから」


そう言って、ゆっくりと頭を撫でてくれる。


その手は、思ってたよりずっと大きくて温かくて。

この手になら、自分を委ねてもいいかもしれないって思えたんだ。


「ごめんね……。ホント、ごめん」


言いたい事は、たくさんあるのに。

言葉を覚えたてのオウムのように、それだけしか言えなくて。


そして、そんな私を彼は優しい笑顔で受け入れてくれる。


ホント…ありがとう。
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