揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
「ほら、練習してみて?」


笑顔なんだけど、意外と高崎君は意地悪な気がする。


隠れSってやつじゃないの……?


そんな事を考えながらも。

彼の真っ直ぐな視線に耐えられなくなって、つい口にしてしまった。


「真…吾…君っ」


「『君』は余分だよ?ほら、もう一回」


「……真吾」


消え入りそうな声で、そう呼んでみた。

言ってるそばから、顔がどんどんと赤くなっていくのが分かる。


恥ずかしいっっ。


言い終わるとすぐに、両手で頬っぺたを触ってみた。

かなり熱い気がする。


「よく言えました。じゃあ、これからは俺も『由佳』って呼ぶんでよろしく」


さらっと言ってのける高…真吾は、私なんかよりも随分大人な気がした。


「よ、よろしく……」


そんな言葉しか返せない私は。

やっぱり、お子ちゃまなのかもしれない。


「あ、この店寄っていいかな?」


彼が指差したのは、大きなスポーツ用品店。

新しいバッシュが欲しいと言ってたんで、今日は一応ここがメイン。


「うん、見に行こっ」


そして私達は、その店へと足を踏み入れた。

広くて品揃えも多いので、店内は結構な人で溢れかえっていた。


「バスケはここだな」


入口を入って右の奥の方に、バスケ用品のコーナーがあった。

その奥は野球みたいで、有名選手のポスターが貼ってある。


野球かぁ……。


自然と、大翔君を思い出してしまっていた。


ユニフォーム姿に、黒いファーストミット。

今でも鮮明に思い出せる。


頭と心が、だんだんと大翔君の姿を求めていた。


だから…初めは幻覚だと思ったんだ。

野球のコーナーにいる、大翔君の姿を……。
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