揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
「何…してるの?」


私と大翔君の顔を見比べながら、真吾はそう尋ねてきた。


「トイレ…行こうとしたら、偶然会って……」


すぐにバレるだろう、嘘。

だけど、何か言わずにはいられなかった。


だって、真吾は私に好きな人がいる事を知ってるから。

それが大翔君なんだって事に…気付いてしまうかもしれない。


もし、それを真吾から彼に言われたら……?


そう考えると、怖かった。

ますます、居心地が悪くなってくる。


「偶然会っただけにしては、何だか様子が変だけど?」


真吾の顔つきが、いつもと違う気がする。

絶対、何か感じてるんだろうな。


もしかして、バレた……?


「……俺が悪いんですよ」


ふいに、大翔君が口を開いた。


「俺が、克也…由佳さんの弟の事で訊きたい事あったから、急いでたのに引き止めたんです」


ある意味、それは当たってるんだけど。


大翔君は、きっと私の為に嘘をついてくれたんだと思う。

真吾が変に思わないように。


「そうなの?由佳」


「え?あ、うん……」


とりあえず、それに乗るしか手がなかった。

たとえ真吾が不審がったとしても、これを通すしかない。


「……分かった。とりあえず、場所変えようか?ここじゃ落ち着いて話できないし」


そう言われて辺りを見回すと、いつの間にか人だかりができていて。

結構な人数に囲まれていることに、今更ながら気付いた。


「俺、母さんがあっちにいるんで、ここで失礼します。ホント…いきなり、すいませんでした」


そう言って頭を下げると、大翔君は来た道を走って戻って行った。
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