揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
「あのさ、克……」


「うん」


「お願いがあるんだけど……」


その一言に、何故かアイツは身構えだした。


「……何よそれ?」


「いや、姉ちゃんのお願いってろくな事ねぇし」


まぁ…ね。

ろくな事じゃない、って言ったらそうなんだけどさ。


「と、とりあえず、お願いね」


「えっ?嫌だよ、変な事頼まれんのっ」


「まだ頼んでないのに、何言ってんのよコイツはっ」


思わず、両方のこめかみをゲンコツでグリグリしてしまっていた。


「いてっ、いてぇよ姉ちゃんっっ」


悲鳴にも似た克也の声に、私は我に返っていた。


しまった!

これからお願い事をしなくちゃいけないのに、思わずやってしまった……。


「か、克也くぅん、ごめんね?」


最上級にかわいく言ってみせる。

機嫌を損ねないように。


「……ぜってぇ頼みなんてきかねぇしっ」


怒ってる。

ムカつくけど、怒ってる。


落ち着け、由佳。

ここは、克也にお願いしないと先に進まないんだから。


「お、お願いがあるんだけどさ?」


「……頭グリグリされて頼みきく奴なんている?」


そりゃそうだ。

だけど、きいてもらわないと困るんだよ。
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