揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
「え?どういう事?っていうか、いつの間に番号ゲットしてたの?」


「だから、練習試合観に行った日に携帯落として、一緒に探してもらったでしょ?」


何を今さらって思ったけど、克也はどうやら初耳だったらしく、


「何それ?俺、知らないけど」


って、ポカンとしてる。


大翔君、克也に言ってなかったんだ……。


てっきり、全部克也に筒抜けかと思ってたから。

携帯を探してもらった事、間違い電話の事、映画館で会った事、そして…今日の事。


克也に言ってないのって、意味があるの?

別に大したことじゃないから?


それとも……?


「とりあえず番号は分かるんだけど、この携帯からじゃ繋がらないのよ」


「じゃあ、家からかけたら?」


「……意外と頭いいじゃん、あんた」


盲点だった。

そうじゃん、家から掛ければいいんだよ。


「っていうか、そこ気付かねぇかなぁ?……とりあえず、家の電話だと母さんに聞かれるかもしれないから、電話してきてやるよ。番号メモって」


そして克也からメモ用紙と鉛筆を受け取ると、私は大翔君の携帯番号を書き写した。


その紙を渡すと、克也はそのまま部屋を出て行こうとして。

慌てて私は声を掛けた。


「あっ、克也っ」


チラッと視線を送って来た克也に、私はもう一度確認をした。


「ホントにいいの?私が大翔君に告っても……」


「まぁ、いんじゃね?大翔はしっかりしてるし、姉ちゃんにはちょうどいいかもよ?」


「でも、私…高校生だよ?5つも上なんだよ?気持ち悪いとか…思わない?」


「そりゃあ、びっくりしたよ。だけど、大人になったら5歳ぐらい関係ないだろ?大翔もさ、そんな事気にする奴じゃねぇと思うよ」


今日ほど、この小憎たらしい弟が頼もしく見えた事はなかった。


大人になったら関係ない。


そうだよね。

あと10年もしたら、別に誰も何も言わないよ。


とりあえず、この想いをちゃんと伝えなきゃ……。
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