揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
「今日、久しぶりに作ってみたんだ。口に合うかどうかわからないけど……」


そのクッキーは、どうやら由佳さんの手作りらしい。

ニ色のクッキー。


そういえば、母さんもよく作ってくれたっけ。

まどかさんは料理が得意じゃないし、梨香もこういう事はしない。


嬉しいかも……。


「食べていいですか?」


甘い香りがほのかに漂う、バタークッキー。

手が伸びそうになるのを、ぐっと堪えていた。


「あ、もちろんっ。こんなので良かったら」


言われるとすぐ、俺は一番上に積んであったやつを手にした。


「いただきます」


甘くて、なんだか懐かしい香りと共に口に運ぶ。

ほどよい甘さが口に広がり、食感もちょうど良かった。


母さんのクッキーと、よく似ていた。


「ど、どうかなぁ?」


不安げな顔で、由佳さんがこっちを見てくる。

久しぶりに、彼女と目が合ったかもしれない。


「おいしいですよ。俺の好きな味だし」


お世辞じゃなくて、本心だった。

甘いのがそんなに得意じゃない俺でも、何枚でも食べられそうな味。


「そっか。良かったぁ」


そして、やっと見られた彼女の笑顔。

ほっとしたような表情が、何とも愛おしくて……。


胸が、ぎゅうっと締め付けられる。
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