揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
「……あぁ、じゃあまた後で」


そう言って、大翔君は電話を切った。

携帯をジーンズにしまうと、当然のように両手で優しく抱きしめてくれる。


「梨香と、話してくるから」


そう、耳元で優しく話す。


くすぐったいような、ドキッとするような感覚に。

自然と、背中に回した手に力が入っていく。


「うん……」


なんだか離れたくなくて、言葉を少し濁してしまった。

だって、このままずっとこうしていたいから。


「また、由佳の事ちゃんと抱かせて?」


「えっ?う、うん……」


恥ずかしくて、顔を上げられない。

ちゃんと抱かせるって事は、その…最後までするって事だよね?


恥ずかしいし、ちょっぴり怖い。

だけどそんな事より、私も彼に抱かれたいって体が言っている。


「ありがとう。じゃあ、一つだけお願いしてもいい?」


お願い?


何だろうと思い、顔を上げた。

すぐ近くにある彼の顔にドキッとしながらも、真っ直ぐに見返す。


「由佳から、キスして?」


ほんの少し、甘えたような声。

忘れかけていた年の差を、ふいに思い出させる。


「わ、私からっ?」


「うん。お願い」


幼い子がねだる様な口調に、ついつい負けてしまって。


「う、うん……」


恥ずかしさで、顔が火照ってしまう。

自分からキスするなんて、思ってもみなかった。


こんな時ばっかり小学生になってしまう彼は…ずるいと思う。
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