揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
「ほら」


そう言って、目を閉じる彼。

私よりほんの少し下にある形のいい唇を、ただじっと見つめていた。


自分からキスするなんて、どうやっていいのか分かんないんだってばっ。


「俺とじゃ…嫌?」


目を閉じたままの彼の言葉。

そんな訳ないって分かってて、意地悪で訊いてくる。


「嫌なわけ…ないじゃん」


少し拗ね気味に答え、私は深呼吸を一つした。


大丈夫っ。

キスなんて、ただ唇を重ねればいいんだからっ。


ちょんってすればいいのよ、ちょんって。


ゆっくりと、顔を近づけていく。

彼の長い睫毛に見とれながら、唇への軌道に乗せていく。


あと数センチ…あと数ミリ……。


「……」


ほんの少し触れた、2つの唇。

さっきまでのキスなんて無かったかのように、初めてするみたいな感覚に襲われる。


やっぱり、私の胸はドクドクと忙しい。


元の位置へと顔を戻そうとした時だった。

急に大翔君が目を開けたかと思ったら、頭をつかまれて彼の唇へと再び押し当てられた。


今のとは比べ物にならない、激しいキス。

一通り角度を変えて重ね終えると、おでこを付けたまま、


「よくできました」


と言って、優しく微笑んでくれた。


これじゃあ、どっちが年上なんだか分からないよ。
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