揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
『でも良かったじゃん、彼も好きだって言ってくれて』


そう言ってくれた真吾の声は、優しすぎて。

私にはやっぱり勿体ない人だと思った。


「何でそんなに優しいの……?」


大翔君を諦めるためにつき合おうとした私を、許してくれて。

やっぱり彼を諦められなかった私の事も、許してくれた。


もっと…責めてもいいのに。


利用するだけして、捨てようとしている私を。


『由佳が好きだから。好きな人には幸せになって欲しいって思うのは、おかしい?』


「真吾……」


『幸せになってよ?俺が振られても仕方ない、って思えるぐらいに』


「……うん」


堪え切れずに、涙が零れてきた。

この涙の意味は、何なのだろう?


真吾と別れるのが悲しいから?

真吾に対して申し訳ないから?


違う……。

彼の優しさが、嬉しすぎるからだ。


どんな言葉を使えば、この気持ちを彼に伝えられるんだろうか?


『……友達に戻れるかな?俺達』


しばらく間が空いてからの、彼の言葉。


「……うん」


涙声の私は、そんな言葉しか返せない。


『何かあったら、俺に相談しなよ?それぐらいの役、もらってもいいよね?』


「うん」


もう一度、そう答える。


いいに決まってるじゃん。


『それで、安心したよ。もう悔いはないから、振ってやって?』


「真吾……」


胸が詰まるような感覚に、襲われる。

こんなに想ってくれる彼を振る事が、すごく辛かった。


もし…大翔君より先に出会っていたら?

そしたら、私は真吾を選んでた?


たぶん、答えはNOだ。

出会う順番がどうであれ、私はきっと大翔君を選ぶはず。


『由佳が振ってくれたら、俺達はそこから友達に戻れるよ』


こんな素敵な人よりも、5つ下の彼を選ぶんだ。
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