揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
「……分かった」


絞り出した言葉。

私の為にも、彼の為にも言わなくちゃいけないんだ。


「私と……」


震える声。

黙っているけれど、彼の息遣いが電話越しに伝わってくる。


「私と……」


一呼吸、入れる。

心を落ち着かせて、きちんと伝えなくちゃいけない。


「私と…別れて下さい」


この、言葉を。


「……分かった、別れよう」


その声がとても優しすぎて、彼の人の良さをつくづく感じた。


こんなにいい人を傷つけてまで、私は大翔君とつき合おうとしてるんだ……。


幸せになろう。

そう、自分に言い聞かせる。


真吾の為にも、水沢の為にも、私達の為にも。


「あり…がと……」


零れそうになった涙を、懸命に堪えた。


幸せになるんだから、泣いてちゃいけない。

もう泣かないようにしなくちゃ。


「友達だから、これからも気軽に声掛けてよ?」


「うん」


「ちゃんと、真吾って呼んでくれる?」


「うん」


「安心した。じゃあ…またね」


「うん、またね」


明るく、私は答える。


そして、真吾は電話を切った。

プープープーという機械音だけが、聞こえてくる。


真吾と出会えて、私はホントに幸せだと思う。

だからこそ、彼の優しさを無駄にしちゃいけない。


何があっても大翔君と別れたりしない、と私は心に誓った。
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