揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
「簡単に別れるような女じゃないから、私。大翔が私を好きじゃなくても、私は別れない」


そして、今度はキャミソールを脱ぎ捨てる。

年の割に膨らんだ胸を隠す下着とジーパン姿で、俺の横に腰を下ろしてきた。


「その女とはもうヤったの?」


そう言っておもむろに俺の右手をつかむと、梨香は自分の左胸に押し当てた。


「私よりイイ女なわけ?」


胸の膨らみを感じさせたまま、アイツは俺に顔を近づけてくる。


今日、つくづく思った。

俺が好きなのは…梨香じゃない。


「あの人は、こんな事はしない」


俺の言葉に、梨香は動きを止めた。

緩んだ手から右手を抜き取ると、俺は立ち上がった。


「俺には勿体ないぐらいの、イイ女だよ」


床に落ちている梨香の服とキャミソールを拾うと、俺はそのままアイツに差し出した。


梨香の顔が、羞恥からか真っ赤になり。

俺を睨みつけながら服を受け取ると、黙ったままそれを身につけていく。


「もう、終わりにしよう?」


俺の言葉を、唇を噛みしめながらアイツは聞いていた。


「分かってるだろ?梨香だって。こんな関係、意味がないって事」


俺の心は、もう梨香には戻らない。

形だけの交際を続けていたって、虚しいだけだ。


「誰…なの?大翔の好きな人って」


服を身にまとった梨香が、俺を見上げてきた。

真っ直ぐなその瞳に、嘘は通用しない。


「吉野由佳さん。克也の…姉さんだ」


「吉野君のお姉さんって、あの高校生の?」


「あぁ、その人だよ」


梨香は、驚きのあまり声が出ないでいた。


そりゃそうかもしれない。

まさか俺の好きな人が、5歳も上の彼女とは思わなかっただろう。
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