揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
「向こうは…どうなのよ?小学生なんか、相手にするわけないじゃない」


嘲笑うような、その言い方。

だけど、言葉に力が入っていない。


「由佳さんも、俺の事を想ってくれてたよ。だから、これからは由佳さんと一緒にいたいんだ」


「そんなの、おかしいわよっ。小学生と高校生がつき合うの?2人共、どうかしてるんじゃないのっ!?」


「……おかしくても、そんなのどうでもいいよ。俺らがそれでいいんだから、周りは関係ない」


由佳さんが俺を選んでくれた。

それだけで、俺は一緒にいられるんだ。


反対されようが、後ろ指さされようが、彼女がいてくれるならそれでいい。


「何で私じゃないのよ……?」


梨香らしくない、弱々しい声。

いつも強気なアイツが見せた、珍しい涙。


俺は…自然と梨香を抱きしめていた。


「ひろ…と?」


俺のいきなりの行動に、梨香は少し戸惑っている。


「ごめんな、梨香」


ぎゅっと抱きしめながら、俺はアイツの耳元でそう謝った。


「や…だよ」


俺より5センチぐらい低い所で、梨香がそう訴える。


「ごめん」


だけど、俺はそう謝るしかなかった。


「おね…がい」


腕の中の梨香は、震えていて。

このまま情に流されそうになる自分に、心の中で釘を刺す。


俺が一番大切なのは由佳さんなんだ、と。


「もう無理なんだ。ごめんな」


そして、俺はゆっくりと梨香から体を離していった。

涙を流すアイツを真っ直ぐに見返し、


「じゃあな」


と、別れを告げる。


その言葉に追いやられるように、梨香は黙ったまま玄関に向かって歩き出した。

肩を落として暗い表情で歩く梨香から少し視線を外し、俺も玄関までついて行く。


「……じゃあね」


靴を履くと、アイツはそう告げた。

俺は、黙ったままゆっくりと頷き返す。


そして、梨香は出て行った。
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