揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤

chapter25

1時間前から降りだした雨は。

雨足をどんどん強くして、しばらく止みそうになかった。


携帯で時刻を確認すると、4時20分。

由佳さんからの連絡は未だにない。


来ないかもしれない人を待つのが、こんなに不安なんだって事を。

つくづく…思い知った。


会いたくて、会いたくて、会いたくて。


だから…幻覚を見ているのかと思ったんだ。

あまりにも想い過ぎて、幻の由佳さんを見ているんじゃないかって。


「遅くなって…ごめんなさい」


雨の中を自転車を曳きながら、彼女は俺の前に姿を現した。

傘もささないでずぶ濡れになりながら、一歩ずつ近づいて来る。


「由佳……」


俺も、雨の中を彼女の元に飛び出していた。


「ごめんね……」


悲しげな顔で俺を見てくる彼女の頬を濡らしているのは、きっと雨だけじゃない。


俺は、思わず抱きしめていた。

ずぶ濡れの彼女は、思いの外冷たくなっていて。


とっさに手を離した彼女の隣で、自転車が横に倒れている。

でも…そんな事は、どうでもいい。


「来てくれて、良かった」


心の底から出た言葉。


無事で、ホントに良かった。


「遅くなって…ホントにごめんね」


心なしか、震えている彼女の体。

その震えを止めてやりたくて、抱きしめる腕に力を込める。


雨の中、ずぶ濡れになりながら抱き合う2人。

そんな俺達を、通り過ぎる人達が興味の目で眺めて行く。
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