揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
「優しくするから」


その怯えを勘違いした俺は、安心させるようにそう言ってから。

右手を…彼女の足の付け根にもっていった。


「い…や……」


初めは、小さくてシャワーの音にかき消されそうな声だった。


「嫌……」


俺の手の動きに比例して、大きくなる拒絶の声。


「由佳……?」


そう、尋ねた瞬間だった。


「嫌っっっ!」


珍しく大きな声を出し、彼女は力の限り俺の体を突き飛ばしてきた。


「……?」


不意をつかれた俺は、浴室の床に倒れこんでしまい。

ちょうど出しっぱなしになっていたシャワーの下に手をついて、体を支えた。


上から降ってくる温かいお湯に頭から濡れつつ、俺は由佳を見上げていた。

彼女は、自分自身を両手で抱きしめながら体を震わせている。


その顔は…すっかり怯えきっていて。

全身で、俺を拒絶するオーラを出している。


「……ごめん」


早急過ぎたと、反省した。


そして、俺がゆっくり立ち上がると。

弾かれるように、彼女は遠くへと離れて行ってしまった。


「由佳……」


この前の時と反応が違い過ぎて、俺は正直戸惑っていた。

こんなに嫌がられるとは、思ってもみなくて。


「ごめん、もうしないから……」


そう言って手を差し伸べるものの、彼女は震えるように首を横に振っている。


嫌われた……。


そう、自覚せざるを得なかった。
< 209 / 298 >

この作品をシェア

pagetop