揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
「あの…さ」


水筒の麦茶を一口飲むと、なるべく平然を装って克也に声を掛けた。


「ん?何?」


自分の水筒を探しながら、克也もごく普通に言葉を返してくる。


聞いてないのかな?由佳さんから。

俺達が、別れたって事を……。


「昨日…由佳さんと話した?」


「姉ちゃんと?いや、昨日は公輝達とずっと遊んでて会ってねぇからなぁ。ってか、姉ちゃん昨日お前とデートだったんだろ?」


「……まぁ、な」


デートとは言えなくなってしまったけど、俺と会ったのは確かだ。


「何かあったのか?」


見つけた水筒に口を付けた後、克也がそう尋ねてきて。


「……別れたんだよ」


水筒を戻した俺は、小さな声でそう伝えた。


一瞬きょとんとしていた克也は、しばらくして脳が回転したらしく、


「えぇーーーーーーっっっ!?」


と、見事なぐらいの大声を出してくれた。


みんなの注目を浴びたのは…言うまでもない。


「克也!大翔!」


監督の怒声が、グラウンドから聞こえる。


この後のセリフは…大体想像がついていた。
< 213 / 298 >

この作品をシェア

pagetop