揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤

chapter29

正直、今日から学校というのは…気が重かった。

大翔君と別れてブルーなのもあるけれど、何と言っても問題はアイツだ。




「諒斗の奴、今日は遅いね。寝坊でもしたかな?」


沙希の言った言葉に、思わずドキッと反応してしまう。

確かに、今日はいつもより来るのが遅い。


会わずに済むなら会いたくない、っていうのが本音。

あんな事があったのに、今まで通りでなんかいられるはずがない。


「あっ、来た来た」


事情を知らない沙希は、もちろん諒斗に対して普通に接していて。

教室に入って来たらしいアイツに、手を振っている。


私はというと……。

とりあえず、アイツの席とは反対の窓の方を向いていた。


私の気分とは正反対の、抜けるような青空。

昨日の雨が、嘘みたいだ。


「ゴールデンウィーク明けだからって、寝坊したんじゃないの?」


沙希の問い掛けに、


「バーカ、朝練だよ朝練。大会、近いからさ」


そんな風に答えるアイツは…いつもの諒斗だ。


何事も無かったかのような錯覚に、ふと陥りそうになる。

諒斗のシた事も実は夢で、大翔君と別れたって事も夢なんじゃないかって。


「大会近いなら、由佳も王子とデートできないね」


何も知らない沙希は、私が真吾とつき合ってると思っている。


沙希に話さなきゃいけない事、いっぱいあるな……。


私にとって今年のゴールデンウィークは、あまりにもいろいろありすぎた。

ここで簡単に話せる事じゃないし、ましてや諒斗の前でなんて無理だし。


とりあえず、「ははっ」と曖昧な笑顔を返してみる。


そんな私の事を…諒斗はじっと見ていた。
< 231 / 298 >

この作品をシェア

pagetop