揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
「悪かったな、2人とも」


担任の中村先生の所に行くと、何やらメモを差し出された。

受け取った諒斗の手元を見ると、化学で使う器具の名前がたくさん書かれている。


「1時間目にこれを使うんだけど、ちょっと時間なくて用意ができないんだ。2人で、それぞれの班ごとに揃えておいてくれないか?」


中村先生は、50代ぐらいの化学の先生。

いつも白衣を着ていて、理科の先生って感じがする。


「分かりました」「はい」


「HRは出なくていいから、そのまま第2理科室で待っててくれ」


そう言うと、先生は慌ただしく職員室を出て行ってしまった。


「荷物、沙希に後で持って来てもらうか」


職員室を出ると、諒斗はズボンのポケットから黒の携帯を取り出した。

歩きながら、器用にメールを打っていく。


そして私は、相変わらずアイツの3歩後ろを歩いていて。

これ以上、距離を縮めたくはなかった。


気まずいっていうのもあるけど、やっぱり怖いのかもしれない。


ある意味、記憶が無くて良かったなんて思っている自分がいる。

記憶があったとしても、逃げられたか自信がない。


覚えていない方がいいって事もあるんだね。


いっその事、大翔君の事も忘れてしまえたらいいのに……。
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