揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
第2理科室は、北棟の3階の端の方にある。

教室がある中棟とは渡り廊下で繋がっているものの、用が無ければわざわざ来る人もいない。


という事で、今この辺りにいるのは私と諒斗だけ。


何か…嫌なシチュエーション。


そんな事を思いながら、アイツの後ろを黙々とついて行った。


理科室に入ると、薬品の独特な香りが鼻についた。

それに顔をしかめながら、私は器具の保管してある棚へと向かう。


「試験管3本ずつと、ビーカーは1つずつ。三角フラスコとアルコールランプもな」


少し離れたところで、諒斗はメモを読み上げていく。

アイツは、薬品棚の前にいて。


言われた物を、私はどんどん棚から班の分だけ出していった。


「試験管立てと、石綿付き金網もいるよね」


確か、メモに書いてあったのを思い出した。

ただ、試験管立てが上の方の棚にあるから、背伸びをしても微妙に届かなくて。


「もうちょい……」


頑張ってつま先立ちをして手を伸ばすけれど、触れそうで触れなくて。


「チビが無理すんなよ」


背後から声がして、気付くと私の手のはるか上に諒斗の手があった。

そのまま、班の数だけ試験管立てを取っていく。


「チビって、これでも160あるんだからっ」


「俺からしたら、十分チビだよ」


そりゃあ、180ある諒斗にしたら私はチビだろうけど。


でも、そんなやり取りは…いつもと何ら変わりないように思えて。

ほんの少しだけ、ホッとした。


お礼、言いそびれちゃったな。

わざわざ、取りに来てくれたのに。


そう、思っていた時だった。


諒斗の両腕が…私を後ろから抱きしめてきた。
< 234 / 298 >

この作品をシェア

pagetop