揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤

chapter30

「これ、大翔から預かってきたから」


紙袋を私に差し出しながら、部活帰りの克也は不機嫌そうにそう言ってきた。


「あ、ありがと」


中身を確認すると、昨日私が着ていたパーカーとジーンズ、それに靴下が入っている。

綺麗に折りたたんであるのがいかにも大翔君らしくて、何だか涙が出そうになってきた。


「ちょっと聞きたいんだけどさ」


いつにない真剣な口調で、克也はそう言うと。

ランドセルと制帽を私の部屋のカーペットの上に置き、自分も腰を下ろした。


勉強机の椅子に座っていた私は、目を合わせたくなくて慌てて机の方に向き直った。


「大翔と別れたってホント?」


直球勝負のその質問に、私の胸はズキンと痛んだ。

克也にもいろいろと協力してもらったのに、こんな結果になってしまって心苦しかった。


「ホント…だよ」


彼からどうやって聞いたのかは分からないけれど。

克也にも嘘をつかないといけないかと思うと、気が重かった。


「大翔は、何で別れるのか訳が分かんないって言ってたけど。姉ちゃんが別れようって言ったの?」


「……そうだよ」


「何で?」


「何で?って…小学生とつき合うなんて、やっぱおかしいじゃん」


克也に背を向けたまま、私はそう答える。

とてもじゃないけど、顔は見せられない。


だって、きっと泣きそうな顔してるから。
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