揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
「……ごめん、由佳。俺、夕ご飯は家で食べるから」


慌てて起き上ろうとした私に、申し訳なさそうに大翔君が声を掛けて来た。


「いっ、いいよっ。全然大丈夫だからっ」


そう言ったものの、ちょっと淋しい自分がいるのも事実だ。


もっともっと、一緒にいたい。


やっと心も体も一つになれて。

ちょっとでも長く、彼といたいって思ってしまう。


「帰る前に、もう一度聞かせて?」


まるで幼い子にするかのように、優しく私の頭を撫でる彼。

どっちが年上だか分かんないじゃんって思いつつ、これが全然嫌じゃなくて。


小学生だろうが、5つ下だろうが。

彼はやっぱり男なんだな、って思った。


「うん。何?」


「もう、別れるって言わない?」


そう尋ねる彼の瞳があまりにも真っ直ぐで、思わず吸い込まれそうになってしまった。

綺麗な漆黒の瞳に私が映ってるという事が、すごく幸せに思えてくる。


「もう、別れないよ」


こんな汚れた体の私を、彼は好きだって言ってくれたから。

惜しみない愛を…たくさんくれたから。


「俺、小学生だけどいいの?」


私の答えに気を良くしたのか、急に彼は意地悪くそう言ってきた。

ニヤッて笑った顔がSっぽく感じるのは…気のせいかな?


「だからそれは、別れる理由が無かったからで。関係…ないよ」


「なら、いいけど」


ふっと笑うと、優しいキスを一つ落としてくれた。

彼のキスは、軽くされるだけでも私の心を満たしてくれる。


愛されてる。

愛してる。


唇を伝って、お互いの愛が行ったり来たりしているみたいで。


諒斗には感じなかったものが、ここには確かにあった。
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