揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
「学校の帰り…だったんだよね?なのに、諒斗に会いに行ってくれたの?」


床に無造作に置かれた、彼の黒いランドセル。

部活の帰りに、会いに行ってくれたんだ……。


「早く確かめたかったし、諒斗と話したかったから」


「大丈夫…だった?」


2人が会って話をしたら、何事もないわけないだろうし。

思わず、そう尋ねてしまっていた。


「……1発、殴っちゃった」


そう言って舌を出す彼が、何とも言えず可愛くて。

すごい事をさらっと言ってのけたという事に、しばらく気が付かなかった。


「……えっ?殴った!?」


「由佳の分の1発だけね。俺の分は、やめといたよ」


「そ、そうなんだ……」


何と答えていいのか分からなくて、そんな返事しか出来なかった。

私の為にありがとう、とか言った方が良かったかな?


「とりあえずさ、これで何も気にする必要ないから」


「うん、ありがと」


「だから…もう、俺から離れないで?」


そう告げる彼の瞳は、とても不安げに見えて。

こんな私を必要としてくれてるんだっていうのが、すごく伝わってきた。


「離れないよ。大翔君が離れろって言ったって、私は絶対離さないから」


そして、想いを込めて彼の背中にぎゅっと腕を回した。

ぬくもりや匂いを感じながら、彼の肩に顔を埋める。


だけど…彼からは何も言葉が返って来なくて。
< 285 / 298 >

この作品をシェア

pagetop