揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
試合の相手は、お父さんによれば市でもなかなか強いチームらしい。

確かに、回を重ねていってもそう簡単には点を取らせてもらえない。


でも、こっちのチームだってみんな頑張ってる。

ピッチャーの春也君と公輝君のバッテリーも、相手に点を与えないように必死だし。

大翔君や克也達も守備で失点を防いでるし。


「1点勝負かもな。小学生で、本当にいい試合してるよ」


お父さんの言う通り、先に点を入れた方が有利には違いないと思う。

少年の軟式野球は、5回までか1時間半までかで試合が終了になるらしい。


「引き分けだったらどうなるの?」


4回が終わって、0対0の同点。

このままどっちも点数が入らなかったら、試合はどうなるんだろうか?


「くじ引きらしいな」


「く、くじ引きっ?」


せっかく頑張っても、くじ引きで負けたら終わりって何かひどいよ……。


「あぁー!!」


急に、こっちの観客席にどよめきが起きた。

慌ててグランドを見ると、相手チームに先制点を入れられてしまったところで。


ランナーが1人戻って来て、相手ベンチがすごく盛り上がっている。


思わず、1塁を守っている大翔君の顔を見ていた。


ここからでも分かるぐらいの、悔しそうな彼の表情。

じっと、相手ベンチを見つめている。


その姿に、私の胸は…また苦しくなる。

最初の試合の時と一緒の気持ち。


彼の為に何かしてあげたいのに。

こんなトコで見ているだけの自分が、もどかしくて仕方ない。


私は、大翔君の為に何かできないのだろうか?

ここで、こうやって見てるだけしかできないの?
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