揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
「頑張って!」


思わず、そう声を掛けていた。


私はグラウンドで戦えないから。

だからせめて、ここから精一杯応援したい。


「まだ、試合終わりじゃないからっ!!」


続けて掛けた言葉に、グラウンドの皆の視線がこっちに向いた。

しんどそうな春也君、諦めかけた顔の克也達。


だけど、彼は違っていた。


大翔君は私の声に気付くと、右手の親指を立ててこっちに向けてきて。

その顔には笑顔が戻っていた。


しばらく私の方を見てから、


「ノーアウト、ランナー2塁!切り替えていくぞー!!」


と、今日一の掛け声をチームのみんなに向けて発していた。


決して、大声を出して盛り立てるタイプじゃない。

そんな彼の一声が、チームの皆の沈みかけた気持ちを再び持ち上げる。


「バーッチコーイ!」


彼の声によって、チームメイトに活気が戻っていく。


「バーッチコーイ!」


「バーッチコーイ!」


克也が、雅志君が、大翔君に続いて大声を上げる。

いつしか、野手みんながもう一度一つになりだした。


「由佳のおかげね」


そんな彼らを見ながら、お母さんは嬉しそうにそう言ってくれた。

観客席からも、次第に声援が飛び交い始める。


「いいチームじゃないか」


お父さんの言葉に、私も頷いた。


もし負けたとしても、胸張って堂々として欲しい。

こんなに素敵なチームなんだから。
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