揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
「……ホントに打っちゃうかなぁ?ホームラン」


嬉しいような、困ったような。

そんな気持ちが入り混じる。


あれは、5回表を1点でしのいだ後のこっちのチームの攻撃の時。


1番克也がシングルヒットで出塁して、2番雅志君が送りバントで1アウトランナー2塁。

3番栄司君が三振に終わった後、4番公輝君がフォアボールを選んで。


2アウトランナー1.2塁で回ってきたのが、5番の大翔君。


前回はいい場面で回ってこなかったけど、今回は一番の勝負所での打席。

とにかく塁に出て、満塁で6番の春也君で勝負という可能性もあったわけなんだけど……。


「あの場面で打たなきゃ、もう打席回ってこないじゃん。そしたら、由佳と来れなかったわけだし」


そして、今。

私は、約束通りに彼と『アルタイル』に来ている。


「っていうかさ、何でラブホのシステムをそんなに熟知してるわけ?」


私にとっては、初めてのラブホなわけで。

入る時だってめちゃくちゃ緊張したし、部屋の選び方とかシステムとか全然分からないのに。


何で、小学生の大翔君がいろいろ詳しく知ってるのよっっ?


「何で?って、どこの店でも似たようなもんじゃないの?言っとくけど、ここは初めてだよ」


『ここは』ってどういう事よ?

『ここは』って!


とりあえず部屋に入り、私達は薄暗い室内で大きなベッドに腰掛けて話をしている。

ユニフォームを家で着替えてきた彼と駅で待ち合わせをして、私達はここに向かった。


ドキドキしてるのが自分1人だけみたいで、それがどうにも悔しい。
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