揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
攻撃は、克也のチームだった。

1塁側が、克也達のベンチ。


今度は、辺りを見回してみた。


うちの親がどこかにいるはずなんだけど……。


あ、いた!


一塁ベンチの右後ろ。

父兄達の応援団ができている中、うちの親も大声で声援を送っている。


「お待たせっ」


お父さん達の所に行き、そう声を掛けた。


「遅かったじゃない、由佳っ。間に合わないかと思ったわよ」


そう言って、お母さんは腕時計を私に向ける。


これでも急いで来たんだけどな……。

そんなことよりっ。


「試合、どう?」


「6対5で1点負けてるよ。これが最後の攻撃だろうな」


グランドに目を向けたまま、お父さんが答えた。


6対5で負けてる……。


私もグランドに目を移すと、打者がキャッチャーフライでアウトになっていた。

よく見ると、3塁に克也がランナーでいる。


「克也、3塁にいるじゃんっ。アイツが帰って来たら同点でしょっ?」


「でも、さっきので2アウトになったんだ。もう犠牲フライじゃ返せないから、ヒットを打ってくれるしかないんだよ」


最終回裏の2アウト。


1点差で負けていて、ランナーは3塁。

次のバッターがヒットを打たないと、そこで試合終了。


次のバッターは?


見ると、克也と仲のいいキャッチャーの公輝(こうき)君。

確か、4番って言ってたよね。
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