揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
そして……。


大翔君は、その場から動かなかった。

今はもう飛んでいない白球を探すかのように、じっと綺麗すぎるぐらいな青い空を見つめている。


その横顔があまりにも淋しげで、私はなんだか切なくなってきた。

負けた事よりも、大翔君に最後打たせてあげられなかったことが悔しい。


チームの中には、ベンチ前で涙を流している子もいた。

監督やコーチが、それを慰めるように一人ずつに声を掛けていく。


克也や公輝君にも。


だけど…大翔君は、まだ動かない。

その姿を見ていたら、何だかやるせなくて涙が流れて来て。


「残念だったわね」


お母さんが、そっと私の手にハンカチを握らせてくれた。


「ホント…だね」


涙を拭きながら、そう答える。

でもきっと、大翔君の方が私の何倍も悔しいはず。


涙も流せないくらいに……。
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