揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
「大翔?」


ふいに、女の人の声がした。

見ると、白い日傘を差した綺麗な女の人が近付いて来る。


「どうかしたの?」


その人は、私と大翔君の顔を交互に見ながら尋ねた。


20代後半ぐらいの、髪の長い若くて綺麗な人。

女優やモデルだって言ってもいいぐらいの容姿で。


思わず…見とれてしまった。


「克也のお姉さんが携帯落として困ってたから、一緒に探してたんだ」


大翔君がそう言うと、何故かその人は安心したような表情を見せた。


「克也君のお姉さんだったの。で、携帯は見つかりました?」


訊かれて、咄嗟に右手を挙げた。

その手は、まだ赤い携帯を握ったままだったから。


「は、はいっ。ひ……か、彼に探してもらって、見つかりました」


『大翔君』って本人がいる前じゃ照れくさくて、そう言い直してしまった。


「あって良かったですね。じゃあ帰ろっか、大翔」


「あぁ」


上品な笑顔を私に向けると、その女の人はそっと大翔君の肩に手を置いた。


彼は、私に軽く頭を下げて歩き出し。

その女の人も、ニコッと会釈をするとゆっくりと歩き出した。


お母さん…なんだよね……?


あまりにも若くて綺麗なんで、驚いた。

思わず、自分の母親と比べてしまう。


大翔君のカッコよさは遺伝だね。


そんな確信を持ちながら、私は2人の後ろ姿を見送っていた。
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