揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
机に向かうと、携帯がメール着信を示すランプを光らせていた。

開くと、それは梨香からで。


≪おはよ。ごめんね、映画の時間勘違いしてて。9時半に変更させて≫


何だよそれ……。


ため息まじりに時計を確認すると、まだ8時だった。

9時に駅でって言うから、7時起きにしたんだけどな。


まぁ、梨香らしいか。


俺は、携帯を閉じて置いた。


次の瞬間、ふと思い立ってもう一度携帯を開いた。

着信ボタンを探る。


【吉野 由佳】


その名前の所で、カーソルを止めた。


『間違って押しちゃって』


そう言った、克也の姉さんの声を思い出す。


間違いか……。


なんか、軽く落ち込んでしまった自分がいて。


バカだよな、俺。

俺なんかにかけてくるわけねぇじゃん。


由佳…さん。


そういえば、雅志がそんな風に呼んでたっけ。


俺も呼んでもいいのかな?

名前、教えてもらえたんだし。


そんな事を考えながら、写真立てに手を伸ばした。

小学校の入学式の日に、学校の前で撮った写真。


俺と本当の母さんが一緒に写った、最後の写真。
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