揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
「何か…今日の大翔、変だね」


怪訝そうに、梨香にそう言われた。

やましい事があるだけに、内心ドキッとしてしまう。


「別に、普通だよ」


そう、普通の事なんだよ。


梨香と出かけてたら、たまたま友達の姉さんが彼氏達と遊びに来てた。

それだけの事じゃん。


……それだけの事、なんだよな。


「そうかなぁ?まぁいいや。今日、うちの親出かけてるの。寄ってく…よね?」


耳元で、意味ありげにそう言われた。

梨香の言いたい事は、分かってる。


「あぁ、いいよ」


「ホント?良かった」


そう言って、喜んで俺にもたれかかってくる。

ふと思い出して前を見たら、もう諒斗って奴はこっちを見てなかった。


代わりに俺の視界に入ったのは。

涙をハンカチで拭いながらすすり泣いている、由佳さんの後ろ姿。


主人公達の悲しい別れに、周りを気にすることなく泣いていた。


そんな彼女が愛しく思えて、胸が締め付けられる。


できる事なら、このまま後ろから抱きしめたい。

勇気を出して手を伸ばして、彼女を俺の腕で包み込んでしまいたい。


もちろん、そうしてしまう勇気なんて俺には無くて。

こんなにそばにいるのに、由佳さんに触れる事ができない。


その時、俺は気付いてしまったんだ。


俺が彼女を気にしてたのは、母さんに似てたからじゃなくて。

彼女を好きになってしまっていたからなんだって……。


改めて自分の気持ちに気付かされ、俺は何だか落ち着かなくなっていた。

今の自分に、すごく居心地の悪さを感じる。


一緒にいたいのは、梨香じゃない。

由佳さんの隣に男なんていて欲しくない。


俺が…由佳さんの隣にいたいんだ。
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