揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤

chapter9

映画が終わり、エンドロールが流れ始める。


俺は梨香の腕をつかみ、由佳さん達に何も言わずにそのまま映画館を出た。


「そんなに慌ててどうしたの?」


最後まで観たかったらしく、梨香はしばらくぶつぶつ言っていた。


「出口混むの、嫌だから」


そんな風に、俺は誤魔化してみた。


「お手洗い行きたいから、ここで待ってて?」


映画館の出口を左に行った突き当たりに、トイレがある。

梨香はのんびりと歩きながら、向かって行った。


とりあえず、俺は近くの自販機の傍で待つ事にして。

しばらくすると、映画館の方から賑やかな話し声と共に、たくさんの観客が出て来た。


終わったんだな……。


俺は、あえてそっちとは逆の方を向いた。

だって、由佳さんがあいつらと楽しそうにしてる姿なんて見たくないし。


「よっ」


ふいに肩を叩かれ。

驚いて振り向いた先には、会いたくなかったアイツ…諒斗の姿があった。


由佳さんと、もう一人の男の姿は無い。


「……どうも」


何て答えていいのか分からず、とりあえずそう言っておいた。


「愛しの彼女は?トイレ?」


辺りをキョロキョロ見回しながら、どうやら梨香の姿を探しているらしい。


「そうですけど。そっちも一人ですか?」


「トイレ行こうと思ったら、お前見つけてさ。一人ならちょうどいいや、訊きたい事あったから」


「訊きたい事?」


っていうか、俺があんたに訊きたい事山ほどあるんだけど。


「お前さぁ、由佳の事どう思ってんの?」
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