揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
「好きなら、諦めてもらおうと思ってさ」


諒斗の双眸が、真っ直ぐに俺を見てくる。

言い方は軽いけど、その眼力には有無を言わせない強さがあった。


見抜かれてるんだろうな、俺の気持ちなんて。

だけど、それを伝えたって仕方の無いコトじゃん。


「……何度も言ってるけど、友達のお姉さんとしてしか見てないから」


そう…答えるしかなかった。

不本意だけど、これが今の俺に言える精一杯だった。


「……分かった。悪かったな、変な事訊いて」


諒斗は手を軽く振ると、トイレに向かって歩き出し。

そして、5・6歩進んだ所で振り返った。


「そうそう。俺、言っとくけど由佳の彼氏じゃねぇから」


そう言って笑った諒斗の顔は、どこか淋しそうに見えた気がした。

そして、そのまま今度こそトイレに入って行った。


諒斗は彼氏じゃないんだ……。


正直、ホッとした。

だけど、アイツの最後の顔が何だか引っ掛かる。


「お待たせ、大翔」


気がついたら、いつの間にか梨香が戻って来ていて。


「あぁ。行こうか」


またここで、諒斗に会いたくは無かったから。

俺は、少し急ぎ足でフードコートへと向かって歩き出した。
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