揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊤
「私、好きな人がいるの」


誰にも、言った事のない気持ち。

沙希にさえ言ってない。


でも、諒斗にはちゃんと言っておきたかったんだ。


「……誰?俺の知ってる奴?」


諒斗の顔つきが変わった。


笑顔がだんだんと消えて行き。

言い方も、ちょっときつくなった。


「……諒斗の知らない人だよ。でも、その人には彼女いるから。まぁ、私の片想いなんだけど」


その相手が小学生だって事は、とても言えなかった。


「……だから?」


「えっ!?」


いや、『だから?』って訊かれても……。

普通、そこで察してくれるよね?


「だから、何なの?」


「いやっ、だから、その……。と、とにかく、私は好きな人がいるから。その…高崎君の気持ちには……」


「応えられないって事?」


やっと察してくれて、私はこくりと頷いた。

だけど、諒斗が続けたのは意外な言葉で。


「片想いなら、諦めたら?」


「え?」


「だって、片想いなんだろ?相手に彼女いるんだろ?だったら、想ってたってしょうがねぇじゃんっ」


「そりゃそうだけど……」


諒斗が言ってるのは、確かに正論かもしれない。


だけどこの気持ちは、そんなに簡単には捨てられない。

今までの相手とは、違うんだよ……。


「とりあえず、真吾は友達なんだからさ。そんな堅く考えんなよ」


そう言うと、諒斗はまた笑った。


考えるに決まってんじゃん……。


とりあえず、それ以上その話をするのはやめて。


気がつけば、映画館の入った大きなショッピングモールのある駅はすぐそこに迫っていた。
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