闇夜に笑まひの風花を

耳まで痛くなるような、冷たい外気。
視界を横切るのは純白の雪。
通り過ぎる風が軽いそれを巻き上げる。
頬に当たったそれらは冷たくて。

それがまた、心を凍えさせていく。

焦燥感が募って。
硬く握り締めた手の平に冷たい汗をかく。

地下は術の灯りが消えていて。
視界を埋め尽くすのは真っ暗な闇。

力が零れ出しているのは。

探るまでもなく一室を見つけて。
ゾッとした。
身体中の産毛が逆立つ。

ただ漏れな邪気。
それを抑えようとする力との均衡。

目が回りそうだった。

……一体、お母様たちは何を喚(よ)び出したの!?

明らかに、手に負えるようなものではない。

__邪気が、まるで誘うように蠢く。

ゴクリ、と生唾を飲み込んだ。

怖がっていられるような状況じゃない。
何の為にここに来たの。

邪魔をするためじゃない。
お母様たちを助けるため。
みんなの無事を確かめるため。

私だけを危険から遠ざけようなんて、そんなズルいことさせない。

私は嗤う膝を叱咤して、靴底を擦るように足を進める。
一歩ずつ、半歩ずつでも。

動け、動け。

怖さは消えない。
恐ろしさが近づく度に増して。
邪気が嘲笑うように心臓を撫でて行く。

行きたくない、なんて本能を理性で抑え込んで。
進む。
近づく。

邪気の溢れる部屋に。
みんなの居るところに。

__ねえ、お願い。
私を一人にしないで……。

< 185 / 247 >

この作品をシェア

pagetop