闇夜に笑まひの風花を
耳まで痛くなるような、冷たい外気。
視界を横切るのは純白の雪。
通り過ぎる風が軽いそれを巻き上げる。
頬に当たったそれらは冷たくて。
それがまた、心を凍えさせていく。
焦燥感が募って。
硬く握り締めた手の平に冷たい汗をかく。
地下は術の灯りが消えていて。
視界を埋め尽くすのは真っ暗な闇。
力が零れ出しているのは。
探るまでもなく一室を見つけて。
ゾッとした。
身体中の産毛が逆立つ。
ただ漏れな邪気。
それを抑えようとする力との均衡。
目が回りそうだった。
……一体、お母様たちは何を喚(よ)び出したの!?
明らかに、手に負えるようなものではない。
__邪気が、まるで誘うように蠢く。
ゴクリ、と生唾を飲み込んだ。
怖がっていられるような状況じゃない。
何の為にここに来たの。
邪魔をするためじゃない。
お母様たちを助けるため。
みんなの無事を確かめるため。
私だけを危険から遠ざけようなんて、そんなズルいことさせない。
私は嗤う膝を叱咤して、靴底を擦るように足を進める。
一歩ずつ、半歩ずつでも。
動け、動け。
怖さは消えない。
恐ろしさが近づく度に増して。
邪気が嘲笑うように心臓を撫でて行く。
行きたくない、なんて本能を理性で抑え込んで。
進む。
近づく。
邪気の溢れる部屋に。
みんなの居るところに。
__ねえ、お願い。
私を一人にしないで……。