闇夜に笑まひの風花を
ドアノブに震える指で触れると、それは勝手に開いた。
開いた、というより吹き飛んだ。
瞬間、視界が一気に明るくなって、目の奥が痛む。
エネルギーの高さに風が生じていて、それが髪を舞い上げた。
『__アンジェっ!!』
それは悲鳴だった。
言葉にされない思いは、助けを求めるものではなく、どうして来たの!というもの。
視力が戻って見たものは、呪術師の全員が総出で一つの陣を囲っているところ。
『お母様っ!お父様ぁっ!!』
その、陣の上。
多重円と四角と月の模様。
その間に埋められている特殊文字は白から赤まで様々。
そんな、何の陣か すぐには分からないような複雑な形をした、陣の上。
宙に浮いている黒い煙のようなものが。
笑った、気が……した。
煙には目も口も見当たらないのに。
確かに、私を見て。
笑った__。
お前か__!
そんな、幾重にも音が重なったような声で。
にやり、と。
標的を見つけたように、笑って__。
迫る、黒い影。
私の眼前で、意地悪く口角を引き上げて。
お母様とお父様の悲鳴を最後に。
私は真っ黒な闇に染められた……。