闇夜に笑まひの風花を

その日。
そこに居たのは、お母様とお父様、アミルダの高位の呪術師たち十六人。

そして、監視役の__ツユキさまだった。


あまりの痛みに気を失った私は、わずかな時間を置いて目を覚まし、目の前の光景に愕然とした。

最初は、何が起こったのか分からなかった。

目を眼球が飛び出そうなほど見開き、呆然と見つめる。

瞳に飛び込んで来るのは、赤、赤、赤……。

床の石を真っ赤に染め、
四方の壁を赤く塗りつぶし、
天井まで飛び散る、赤。

呆然としたまま、ふらふらと立ち上がる。
錆びた鉄のような匂いが鼻についた。

……おかあ、さま……。
おと、さま……。
どこ……。

出て来て。
抱き締めて。

頭が、おかしくなりそう……。

私の目の前に広がっているのは、なに……?

赤、赤、赤。
そして、そこから少しだけ覗くのは、白……だ。

カツ……、と。
何かが足に当たって視線を向けると__そこにあるのは髪、で。

赤に染まった毛。
疎らに顔を出すのは__小麦色。

がくん、と足から力が抜けて。
膝を着いて、跳ねる赤。
それが足を染め、顔に飛び散る。

床に力なく投げ捨てられた手は赤に塗れ、その生温かさに肌が粟立った。
適度にどろっとした、その液体の正体に気づいて。

俯けた視界に映り込む、幾つもの骸。

『あ、あ、ああっ、あああぁぁぁっ!!』

うそでしょう、なんて冗談でも思えなかった。

見開いた瞳はもう何も映していない。
喉が、叫び声を押し出し続ける。

思考は動くのをやめた。
壊れた人形のように、叫び続ける。

叫ぶことしか、したくなかった。

そこに転がる骸が誰のものかなんて、知りたくもなかった__のに。

__気づかなければ、良かったのに……。

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