闇夜に笑まひの風花を
「私が、私が殺したの!私が、お父様をお母様を、都夕希さまを__あなたのお母様を殺したのよ!他の誰でもない、私がっ!」
彼女の瞳は深い悲しみに濡れていた。
遥はただ、彼女を見つめ返す。
「私だって、生きても良いなら生きたいよ!本当は、死にたくなんてない!
でも、私が背負うには、犯した罪は重すぎるっ。笑って生きるなんてできない!お母様もお父様も居ない世界で、幸せもない未来を、どうして生きなければいけないの!? 潰れそうな罪を背負って、それでも生きなくてはいけないのっ!?
生きることが償いなら、それだけで償える罪なら、ここがどんなに生き地獄でも、私は耐えるよ!でもっ!それで償えるほど、私たちの犯した罪は軽くない!! これは私たちのけじめなの、償いなの!この、お母様たちが呼び出した、私に中の魔を消すことが!それが、最後の末裔である、私のしなければならないことなのっ。それが、私の命と引き換えにしなければならないなら、私はそれを差し出すまで。
生きたいなんて、私が願うことは赦されないんだから……っ!!」
綺麗な顔を歪ませて、目からとめどなく涙を流して、生きたい、と彼女は慟哭する。
罪の意識に耐えかねて、せめての償いにこの生命を差し出してしまえたら、と願う思いも本当ならば、幸せな未来を思い描いて、恋しい彼の傍で共に生きられたら、と願うのもまた本当。
それが叶わないと知っているから、彼女は泣くのだ。
それが本当だと知っているから、彼は涙を流すのだ。
震える指先で白い頬を流れる涙を拭おうと伸ばした彼の手を、彼女はばしりとはたき落とした。
濡れ光る淡紅の瞳で彼を睨みつけ、唇を噛み締めて精一杯自分を保っている彼女。
甘やかされて、それでも強がりを貫けるほど、彼女は強くないから。
そうと知っていて、遥は抵抗を抑えて彼女を抱き締めた。
片腕で抱き込んで、もう片方で頤を掴み上向かせる。
赤銅色の瞳と杏色の瞳がぶつかり合ったのは、いっとき。
すぐに、くしゃりと彼女の表情が崩れた。