闇夜に笑まひの風花を
:唄
どうして、王子殿下は私を殺さないのだろう?
大罪とは、王家に仇なす罪。
今すぐにでも極刑に処されるのが一般のはず。
わざわざ、危険分子を放っておく必要などないだろうに。
あのときの王子の目には、はっきりと憎悪の色が燃えていた。
私自身が憎いのか、私の血が憎いのか。
どちらにせよ、私を殺してしまえば済む話ではないの?
それとも、憎しむべき対象が居なくなると、感情の捌け口が見当たらなくなるからだろうか。
憎しみを忘れないために、殺さないのだろうか。
それとも、他にもっと重要な理由があるのだろうか?
痣は加護だ、と彼は言っていた。
顔も名前も知らない親が施したのだ、と。
それが意味することとは一体……?
__記憶にない親の考えることなど、私にはひどく難しい話だった。