闇夜に笑まひの風花を

:唄


どうして、王子殿下は私を殺さないのだろう?

大罪とは、王家に仇なす罪。

今すぐにでも極刑に処されるのが一般のはず。

わざわざ、危険分子を放っておく必要などないだろうに。

あのときの王子の目には、はっきりと憎悪の色が燃えていた。

私自身が憎いのか、私の血が憎いのか。

どちらにせよ、私を殺してしまえば済む話ではないの?

それとも、憎しむべき対象が居なくなると、感情の捌け口が見当たらなくなるからだろうか。

憎しみを忘れないために、殺さないのだろうか。

それとも、他にもっと重要な理由があるのだろうか?

痣は加護だ、と彼は言っていた。

顔も名前も知らない親が施したのだ、と。

それが意味することとは一体……?

__記憶にない親の考えることなど、私にはひどく難しい話だった。


< 39 / 247 >

この作品をシェア

pagetop