闇夜に笑まひの風花を
「どういうことだよ?
だってお前、ずっとこのために頑張ってきたんだろ?
やっかみ言われたり、嫌がらせされたり、押し潰されそうになっても、頑張ったのはこのためだったろ!?」

杏は指が白くなるまで、拳に力を込めた。
肩が震える。

泣いて、弱音を吐いて、もう嫌だと叫んで、何度となく傷ついても、それでも彼女は舞を諦めなかった。
朝になったら必ず、歯を食いくばってでも学校に行った。
家に帰ってきたら、泣きながらでも舞を舞った。

その涙も、辛さも、全ては__。

「全部、舞姫になりたかったからじゃねぇのかよっ!!」

「だって……っ!!」

絞り出した声は、苦しかった。
泣かないと決めたのに、涙がぽたぽたと服を濡らす。

遥は黙って耳を傾けていた。

「だって、もうダメなの……っ」

「何がダメなんだよ。それじゃわかんねぇよ」

「わかんなくていいよ!」

私だって、本音は出たい。

ずっと頑張ってきた夢が叶うかもしれない。
そのことがすごく嬉しかった。

でも、今 遥とは踊れない。
こうやって向き合っているだけでも悲しくて、辛い。

__言えないよ。
どうして踊れないのか、あなたにだけは言えれない。

「なんでひねてんだよ。大事なことだろ。
今まで頑張って来たのに、もうちょっと頑張れって__」

「頑張ったよ!!
今まで、ずっとたくさん頑張ってきた」

いくら辛くても悲しくても、あなたの胸の中で泣けば、不思議と心が軽くなった。

また、どうにか歩き出せた。

全ては、あなたという支えがあったから。
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