闇夜に笑まひの風花を
止められない。
やめたら、泣き出してしまいそうだった。
「相手の女の人は知らない人だったけど、良かったね。もう、なんで何も言わないの?でも、うまくいってるみたいで良かった」
「おい、杏」
「私も応援するよ。だから、ね?舞踏会のことは気にしなくていいから。私のことは心配しないで?遥が幸せなら、私も__」
「杏っ」
遥の強い声に遮られ、同時に肩を掴まれて向き直させられる。
じっ、と赤銅色の瞳に見つめられ、耐えきれずに視線を外そうとすると、両頬を包まれて固定された。
「それ、本音?」
遥の視線が痛い。
心臓が音を立てる。
視界が滲む。
「あのさ、杏。誤解してるようだから言うけど、俺に彼女は居ない」
「でも、キス……」
遥は一瞬苦い顔をしたが、諦めたように苦笑する。
「うん、まあそれは事故みたいなもんで。俺の気持ちは一切入ってない。
ついでに言うと、その女も杏の知らない人じゃない」
遥にキスしながら、杏を見て笑んだ女。
それが彼女も知っている女だと知って、杏はぞくりとした。
「だ、だれっ」
「本人が杏に言ってないのに、俺の口からは言えないよ」
遥の表情は内心の複雑さを表すように歪む。
杏は涙を拭いて、伺うような視線を向けた。
彼は苦笑する。
「俺、ここんとこずっと踊っていなかったから、身体が鈍ってるって思って。
でも、杏にそんなかっこ悪いとこ見せらんねぇから、稽古つけてもらったんだ。その帰りだったんだよ」
杏は彼が自分のためにしてくれたことを疑っていたことに気づき、顔色をなくす。
「私、遥が嘘吐いてデートしてるって思って……ごめんなさい」
やめたら、泣き出してしまいそうだった。
「相手の女の人は知らない人だったけど、良かったね。もう、なんで何も言わないの?でも、うまくいってるみたいで良かった」
「おい、杏」
「私も応援するよ。だから、ね?舞踏会のことは気にしなくていいから。私のことは心配しないで?遥が幸せなら、私も__」
「杏っ」
遥の強い声に遮られ、同時に肩を掴まれて向き直させられる。
じっ、と赤銅色の瞳に見つめられ、耐えきれずに視線を外そうとすると、両頬を包まれて固定された。
「それ、本音?」
遥の視線が痛い。
心臓が音を立てる。
視界が滲む。
「あのさ、杏。誤解してるようだから言うけど、俺に彼女は居ない」
「でも、キス……」
遥は一瞬苦い顔をしたが、諦めたように苦笑する。
「うん、まあそれは事故みたいなもんで。俺の気持ちは一切入ってない。
ついでに言うと、その女も杏の知らない人じゃない」
遥にキスしながら、杏を見て笑んだ女。
それが彼女も知っている女だと知って、杏はぞくりとした。
「だ、だれっ」
「本人が杏に言ってないのに、俺の口からは言えないよ」
遥の表情は内心の複雑さを表すように歪む。
杏は涙を拭いて、伺うような視線を向けた。
彼は苦笑する。
「俺、ここんとこずっと踊っていなかったから、身体が鈍ってるって思って。
でも、杏にそんなかっこ悪いとこ見せらんねぇから、稽古つけてもらったんだ。その帰りだったんだよ」
杏は彼が自分のためにしてくれたことを疑っていたことに気づき、顔色をなくす。
「私、遥が嘘吐いてデートしてるって思って……ごめんなさい」