月を狩る者狩られる者
朔夜は私の反応に満足気に笑い、車のエンジンをかける。


からかわれた?


今度は別の意味で顔が赤くなる。

ムスッとして背もたれを戻すと、朔夜が車を発進させた。



朔夜の顔を見ていたくなくて……。

同時に私の顔を見せたくなくて、私はずっと助手席側の窓から外の風景を見ていた。


朔夜の意地悪!
ドS!


すれ違う車や人を見ながら、私は心の中で悪態をついていた。


それでも『嫌い』なんて言葉は出てくる様子はなくて、やっぱり好きなんだなあと再確認してしまう。


まあ、だからこそなおさら腹が立つんだけど。


窓ガラスにうっすらと映る朔夜は無表情だ。
< 163 / 421 >

この作品をシェア

pagetop