月を狩る者狩られる者
もう、思考を巡らすことすら困難なほど睡魔がすぐそこまで迫っている。


「それに、あいつはどんな感情であれお前の心の一部を占領している。そんなことを俺が許すはずはないだろう? お前は、俺のことだけ考えていればいいんだ」

朔夜が何を言っているのかすらちゃんと把握出来ない。

ただ、物凄く自分勝手なことを言っている様な気はする。


うつらうつらと、本気で眠気に逆らえなくなり頭が船を漕ぐ。

そうなってから、十六夜の声が聞こえた。


「もういいだろう……? 黙っていれば勝手なこと言ってくれるね。まるでお前の方が俺を殺したがってるみたいだ」

「みたいではなく、そうなんだが?」

「はっ! まあ、もうどうだっていいさ。何もかも、どうでもいい……」


もう私の目ははっきりものを映してはくれない。

それでも十六夜が暗く微笑んでいるのは予測出来た。
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